子どもが生まれて、変わったこと、変わらなかったこと。
アメリカツアーで戦っていた頃、私は何度も印象的な光景を目にしています。選手が家族と一緒に移動し、試合会場には託児所があって、プレーが終わったら子どもが飛び出してくる。当時の私は「プロゴルファーは結婚したら、ましてや子どもができたら、続けられないもの」だと思い込んでいました。だからこそ、母親になってもツアーを回っている選手たちの姿は、目からうろこでした。「子どもがいても、プレーを続けていいんだ」。その景色が、ずっと心のどこかに残っていたんだと思います。
正直に言うと、一番大変なのはゴルフではなく、移動です。日本のツアーは毎週、全国を転々とします。子どもが2〜3歳になるまでは、長時間じっとしていられません。移動中に泣き出すし、まだ上手く歩けない時期は荷物を抱えて子どもを抱っこして、という日々でした。
そのため移動は、北海道と沖縄以外は基本的に車とフェリーを利用しています。フェリーなら車ごと移動できるため、大量の荷物を積み替える負担も少なく、船内や車内なら子どもと一緒に落ち着いて過ごすことができます。試合や練習の日はホテルでの夜泣きなど夫が全面的にみてくれていました。
私一人では到底ツアーを回ることはできませんでした。夫、そして夫のご両親、シッターさん。たくさんの人に支えてもらっています。誰がどの試合に同行できるかのスケジュール調整、同行してもらうための交通費や宿泊費といった費用のこと。頭を悩ませることは尽きませんでしたが、「家族みんなでひとつのチーム」として戦っている、そう思えるようになったのは、ママプロならではの発見でした。
最近は託児所を用意してくださる試合も増えてきて、本当にありがたいです。託児所があると分かるだけで、試合への集中の仕方がまったく違います。まだすべての試合にあるわけではないので、その時々で工夫を重ねていますが、少しずつ環境が変わってきていることも、続けてきてよかったと感じる瞬間です。
うれしい変化もあります。子どもがツアー先の地名を覚えて、「今週は北海道だね」「次は沖縄?」と話すようになったこと。グリーンの外から、小さな目で私のプレーを見ていてくれること。試合が終わってホテルに戻れば、どんなに疲れていても、元気いっぱいの子どもが「今日は頑張れた?」と飛びついてきます。体力的にはヘトヘトです。でも、一緒に遊んでいると、疲れが幸せに変わっていくのが不思議です。
そして、今の私にはもうひとつ、ツアーを回り続ける理由があります。アメリカで「子どもがいてもプレーは続けられるんだ」と目の当たりにしたあの瞬間は、私にとって、ゴルフと幸せがつながった衝撃の体験でした。だから今度は、日本で子どもを連れてプレーを続ける姿を見て、他の選手や親御さんに「そういうこともできるんだ」と感じてもらえたら。人生の選択肢のひとつに、その可能性を入れてもらえたら。そうやって少しでも、選手たちや育児と仕事の両立に悩む方々の幸せにつながる選択肢が増えていけば、こんなにうれしいことはありません。
子どもが生まれて、ツアーの景色はすっかり変わりました。けれど、勝ちたいという気持ちだけは、あの頃のままです。いつか優勝して、家族3人で写真を撮ること。それが今の、私のいちばんの夢です。


